遊びながら学ぶと、本当に身につくのか

研究紹介

遊びながら学ぶと、本当に身につくのか ── 海外と日本の5つの研究から

「ゲームで遊んでいるだけではないか」。知育ゲームを前に、多くの保護者が抱く疑問です。数や言葉をゲームで使う学び方については、遊んだ子どもと遊ばなかった子どもを比べる実験が、海外と日本で行われています。その結果をまとめました。(紹介する研究は、当店の商品を調べたものではありません。)

数字のすごろくで、数の理解が伸びた

メリーランド大学のジータ・ラマニ氏とカーネギーメロン大学のロバート・シーグラー教授は2008年、4〜5歳の子どもを対象に、1から10の数字が順に並んだすごろくで遊ぶ実験を行いました[1]。子どもたちはコマを進めるたびに、止まったマスの数字を声に出します。1回15〜20分の遊びを、2週間で4回行いました。

比べる相手として、数字の代わりに色が塗られた同じ形のすごろくで遊ぶ子どもたちも用意されました。数の大小の比較、数直線上での見積もり、数え方、数字の読みの4つが伸びたのは、数字のすごろくで遊んだ子どもだけでした。伸びた分は、9週間後の確認でも残っていました。

研究の概要
対象 米国の低所得家庭の4〜5歳児124人
方法 数字のすごろく/色のすごろくに分けて、1回15〜20分×4回(2週間)遊ぶ
結果 数字のすごろくの子どもだけ、数の比較・数直線の見積もり・数え方・数字の読みが伸び、9週間後も続いた

同じ「すごろくで遊ぶ」でも、数字を使わない版では伸びませんでした。遊ぶこと自体よりも、遊びの中で数を何度も使うことが効いていたと考えられます。

この種の研究はその後も各国で続き、2025年にはオレゴン大学などの研究チームが、就学前から小学2年生を対象にした18本の研究をまとめて分析しています[2]。結果は、子どもの算数の力に統計的にはっきりした効果があるというものでした。ただし効果の大きさは「小さめ」と報告されています。遊ぶだけで劇的に伸びるわけではありませんが、たくさんの実験を合わせても効果は消えなかった、ということになります。

分数のカードゲームを10週間続けたクラス

ベルギーのブリュッセル自由大学などの研究チームは2012年、小学4・5年生292人を対象に、分数のカードゲームを授業に取り入れる実験を報告しています[3]。半分のクラスが10週間、分数が書かれたカードで神経衰弱やブラックジャックなど5種類のゲームを(木の円盤で分数の大きさを確かめながら)行い、残りのクラスはいつも通りの授業を受けました。

研究の概要
対象 小学4・5年生292人(ベルギー)
方法 10週間、分数カードを使った5種類のゲームを授業で行う
結果 分数の大きさの見当・比較で、ゲームのクラスがよく伸びた。約分などの手順は通常授業のクラスが伸びた

ゲームを続けたクラスは、分数の大きさの見当をつける問題や、2つの分数を比べる問題でよく伸びました。一方で、約分などの手順については、通常授業のクラスのほうが伸びています。研究者は、意味の理解だけでは計算の手順は身につかず、異なる分母の計算などは手順として教わる必要があったと述べています。カードゲームが得意なのは前者で、計算の練習には授業やドリルも欠かせない、という読み方になります。

日本の研究:算数が苦手な子ほど効果があった

日本でも、カードゲーム型の教材を使った研究があります。当時関西大学大学院の村川弘城氏(現・日本福祉大学)は2014年、算数の「考え方」を育てるカードゲーム「マスピード」を使ったクラスと、使わなかったクラスを比べました[4]。報告では、特に算数の考え方のレベルが低い子どもに対して効果があったとされています。

ゲームという形が、算数が苦手な子にとっての入口になりうることを示す結果です。

言葉は、大人が少し関わると身につきやすい

言葉の学び方についても研究があります。米テンプル大学のタマラ・トゥーブ氏、キャシー・ハーシュ=パセック教授らの研究チームは2018年、低所得家庭の幼児249人に絵本で新しい言葉を聞かせた後、「自由に遊ぶ」「大人がそっと声をかけながら遊ぶ」「大人が主導して遊ぶ」の3つのグループに分けて比べました[5]。

どのグループも言葉を覚えましたが、大人が関わった2つのグループのほうが、より多くの言葉が身についていました(2つの間に差はありませんでした)。研究チームはこのうち、子どもの主体性を残したまま大人が少し導く形を「導かれた遊び(guided play)」と呼んで研究を続けています。

研究から読み取れる、家庭での取り入れ方

紹介した研究から、家庭でも取り入れやすい点を3つ挙げます。数字や言葉を声に出して何度も使うこと。大人が一緒に遊び、少し声をかけること。そして1回は短くてよいので、何度か続けることです。すごろくの研究では、1回15〜20分の遊びを2週間で4回行っていました。夕食後の15分を数日続けるくらいなら、多くの家庭で取り入れやすいはずです。

参考文献

  1. Ramani, G. B., & Siegler, R. S. (2008). Promoting broad and stable improvements in low-income children's numerical knowledge through playing number board games. Child Development, 79(2), 375–394.
  2. Nelson, G., Boedeker, P., Devlin, B. L., et al. (2025). Investigating main effects and moderators of linear number board games: A meta-analytic review. Review of Educational Research. Advance online publication. https://doi.org/10.3102/00346543251383552
  3. Gabriel, F., Coché, F., Szucs, D., Carette, V., Rey, B., & Content, A. (2012). Developing children's understanding of fractions: An intervention study. Mind, Brain, and Education, 6(3), 137–146.
  4. 村川弘城(2014)「数学的な考え方を育成するカードゲーム型学習教材『マスピード』の評価」『日本教育工学会論文誌』37(4), 387–396.
  5. Toub, T. S., Hassinger-Das, B., Nesbitt, K. T., Ilgaz, H., Weisberg, D. S., Hirsh-Pasek, K., Golinkoff, R. M., Nicolopoulou, A., & Dickinson, D. K. (2018). The language of play: Developing preschool vocabulary through play following shared book-reading. Early Childhood Research Quarterly, 45, 1–17.

ご注意ここで紹介した研究は、研究者が用意した教材で行われたもので、知育カードパークの商品を使ったものではありません。商品の効果を示すものではないことをご了承ください。